2026.11.01
< ちょッと変えたら >
相田みつを
「えらい車の数だなあ……
これじゃ動きが取れないね
なんでこんなに混むんかねえ」
ある橋の上で立往生した車の中で
わたしは少しイライラして
ハイヤーの運転手にぼやいた
すると運転手が笑顔で答えた
「お客さんねえ
車の混む原因の一ツは
この自分の車なんですよねえ
こんな時にはのんびりと
河の流れでも眺めていて下さいよ」
わたしはわたしより若い運転手に
見事に一本取られた思いだった
そして車の窓から河下の方を眺めると
遠い浅瀬の中に
白鷺が一羽いるのが見えた
白鷺の白い光は深い秋の色だった
偶然乗り合わせたハイヤーの
運転手のおかげで心の向きを
ちょッと変えたら
寂かに深まる秋の光の色が見えた
『ちょッと変えてみる』
急いでいるときや思いどおりにいかないとき、私たちはつい目の前のことばかりに心を向けてしまいます。
相田みつをの詩「ちょッと変えたら」には、橋の上の渋滞の中でいら立つ「わたし」が登場します。
車が動かないことへの不満をこぼすと、運転手は笑顔でこう言います。
「車の混む原因の一ツは この自分の車なんですよねえ」
思いがけない言葉に、はっとさせられたのでしょう。
相田みつをは窓の外へ目を向けます。
すると、遠くの浅瀬にたたずむ白鷺の姿が目に入り、「寂かに深まる秋の光の色」を見つけます。
景色が変わったわけではありません。
変わったのはほんの少し。
「心の向き」だけでした。
日々の暮らしの中で、ふと顔を出す不満やイライラ。
深まる秋のひとときに、この詩とともに少し立ち止まり、いつもとは違う方向へ目を向けてみませんか。
思いがけない景色や気づきが、そこに待っているかもしれません。
相田みつを美術館 作品広報室
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次回は、2026年11月15日頃にまた違う作品のコラムとリール動画の公開を予定しております。