2026.10.15
< 百点満点のビリ >
相田みつを
小学校の運動会
一年生の走りっこは50メートル
スタート係りの先生の
赤い旗がふられるたびに
お父さんやお母さん達の喚声が
山間の校庭にわきあがる
「わァ!! うちの太郎は一着よ!!」
「うちの花子は二着だ!!」
一着だ、二着だ、と
順位をつけるのは大人達
つまり、自分では走らない傍観者
走っている当事者―――
子供達は
大人のつける順位などは
全く意識にない
ただひたすら走るだけ
いのちいっぱいに走るだけ
いのちいっぱいに走ることが
尊いのだ
いのちいっぱいに走ることでは
みんな百点満点なのだ
一着二着の順位はあるけど
一着も百点満点
二着も百点満点
そして―――
百点満点のビリなのだ
お釈迦さまはいいました
「すべての人間は
みんな仏さまの子だ」と
一人一人の人間には
それぞれに能力の差はあるけれど
いのちの尊さは同じだからです
どんな人のいのちでも
平等に百点満点に
尊いからです
『それぞれの百点満点』
「一着だった」 「二着だった」
私たちは子どもの頃から、知らず知らずのうちに順位や点数で評価される世界の中で生きています。
『百点満点のビリ』には、小学校の運動会で懸命に走る子どもたちの姿が描かれています。
その中で印象に残るのは、「一着だ、二着だ」と順位を気にするのは周囲の大人たちであり、走っている子どもたちは「ただひたすら走るだけ」だと語られていることです。
誰かより速いか、優れているか。
私たちはいつの間にか、結果や評価に目を向けてしまいがちです。
けれどもこの詩を読んでいると、本当に大切なものは、別のところにあるのではないかと思えてきます。
相田みつをは、
「いのちいっぱいに走ることが 尊いのだ」
と記しました。
速く走れる人もいれば、そうでない人もいます。
得意なことも苦手なことも、一人ひとりそれぞれ違います。
だからこそ、
「一着も百点満点 二着も百点満点 そして─── 百点満点のビリなのだ」
という言葉が、まっすぐ胸に届くのかもしれません。
周りと比べて落ち込んだり、自分に点数をつけてしまったりすることは、大人になってからも少なくありません。
そんなとき、この詩に描かれた子どもたちのように、ただ自分の道を精いっぱい進むことの尊さを思い出してみたくなります。
結果や順位ではなく、一人ひとりのいのちそのものに目を向けること。
『百点満点のビリ』は、そんなことを静かに問いかけてくれているように感じます。
相田みつを美術館 作品広報室
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次回は、2026年11月1日頃にまた違う作品のコラムとリール動画の公開を予定しております。